不条理ショートストーリー「比喩 #1」
古い友人たちと会いました。そうです、成人式とそれに付随する同窓会です。二十歳の男女が集い、談笑するという会です。そこにはかつての友人達がいました。
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ある者は職につき、ある者は進学し、ある者はニート同然の生活を送っていましたが、彼らがかつての友人であることに代わりはないのでした。ただ礼服を着ていることを除いては。
嗚呼、僕たちは礼服を着なければ会えないような、そんな間柄なのかい。たった5年会っていないだけじゃあないか。どうしてそんな水くさいことをするんだい。
私は、まるで魯迅の小説「故郷」の主人公にでもなったかのような絶望感に襲われました。気づけば会場を抜け出し、駅のホームでうずくまっていました。
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「武豊線、君だけはずっとずっと友達だよ」
終電時刻もとっくに過ぎた夜更に、切れかけの蛍光灯の下で私は一人そう呟いたのです。すると駅舎という駅舎は崩れ、列車という列車は海へと還り始めました。
嗚呼、君も裏切るんだね。
私には、線路沿いに歩き、家に帰ることしかできませんでした。
家にたどり着くや否や、私はおんおんと、三日三晩泣き続けました。すると世界は涙で覆われ、二十歳男女含むほとんどの陸上生命体が死にました。ノアとその家族だけ生き残りましたが、やがて彼らも死にました。海棲生物たちは、我々の天下だと言わんばかりに、仲良く手を取り合って輪になり、地球を取り囲み始めました。その輪はどんどん広がって、かつて地球と呼ばれた星からは見えなくなっていきました。
そしてこの星には誰も......。